アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)を訪ねて

オランダは、とりわけ17世紀の黄金時代と呼ばれる時期には、貿易や芸術、そして科学といったさまざまな分野で、世界中に名を轟かせていました。今でも、その伝統が遺した芸術作品が数多くオランダ国内に所蔵されています。西洋美術が好きな人にとっては、オランダといえばまずレンブラントやゴッホ、フェルメールをはじめとして、数々のアーティストの名前が頭に浮かぶのではないでしょうか。オランダの各都市ではミュージアムやギャラリーなど、アートスポットが観光の目玉として数多く存在します。

アムステルダム市内に約60ある美術館・博物館の中でも代表的なのは、アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum(ライクスミュージアム))です。2014年12月に公開されたドキュメンタリー映画『みんなのアムステルダム国立美術館へ』を通して、日本でもその評判を耳にしたことのある方が多いのではないでしょうか。今回は、その美術館を実際に訪れてみました。

 

映画でも話題になった大規模な美術館

 

映画では、2004年から9年間という長きにわたって、大幅な改修工事のために閉館していた間、美術館の舞台裏で起こった出来事が描かれています。当初、工事は4年で終わるはずだったそうですが、美術館を通り抜けできる自転車道を撤去するという新しい建築アイディアが市民に猛反対され、結局は市民の意に沿って変更を加え、自転車道を残したまま、リニューアル・オープンに至ったというエピソードが残っています。市民がそこまでこだわるこの美術館とは、いったいどんな存在なのでしょうか。

美術館はミュージアム地区(Museum quartier)という、美術館や博物館、コンサートホールなどの立ち並ぶ、市内でも指折りの雰囲気の良い地域に建っています。アムステルダム中央駅からは、16番か2番、5番のトラムに乗れば20分弱で到着します。「Rijksmuseum」という停留所で降りてすぐ、この建物が目に入ってきます。

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どこかで見たような……? と思った方は鋭い感覚の持ち主です! 実はこの美術館、アムステルダム中央駅を設計したのと同じオランダ人建築家ピエール・カイパースによって1885年に建てられたものなのです。現在では、クラシックな美しさを湛えた外観と、現代的に改装されたインテリアで、日々来訪者を迎えています。

建物の中央部には、例の映画で話題になった自転車・歩行者用の道路が通っています。なお、間違って自転車道を歩くと大変危険ですので、気を付けて進みましょう。係員が立っている「Entrance/Ingang(入口)」という札のガラス扉から入って、階下のロビーへ向かいます。

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チケットは、インターネットで事前に予約することができますが、当日チケットを買っても問題ないと思います。値段は大人が17.5ユーロで、18歳以下は国籍を問わず入場無料。太っ腹ですね!

入場する前に、ロビーで特別展のパンフレットや、館内マップの入った日本語バージョンのパンフレットをもらっておきましょう。……それにしても、色とりどりの多言語パンフレットを見ていると、いったい何か国語のパンフレットがあるのかと驚きます。さすが世界中の人が訪れる、国際的に名の知れた美術館だけありますね。

展示場へ進むには、この四角い入口に立っている係員の人にチケットのバーコードをスキャンしてもらいましょう。イヤホンガイドは、入って右手のカウンターでレンタルできます。

 

4フロアにわたる充実した展示

 

オランダ国内一大きいこの美術館の所蔵点数は約8千点を数え、レンブラントやフェルメール等の名画なども含むコレクションを擁しています。

所蔵作品の展示スペースは、時代ごとに区分けされ、歴史を物語る工芸品や芸術作品が並んでいます。年代を追って展示を巡っていけば、芸術作品を通してオランダという国の歴史と発展について自然と学べるようになっています。

展示フロアには、0階、1階、2階、3階と4フロアがあります。展示全体をゆっくり時間をかけて回ったら、2時間以上かかりそうです。訪れる方の中には、限られた時間で効率よく廻りたい方も多いのではと思いますので、ここに筆者が個人的におすすめする作品群と大まかな展示場所を記しておきます。ご参考になれば幸いです。

①窓や壁画で飾られた空間が美しい「大広間」……2階

有名絵画が並んでいる「名誉の間」の手前に、天井の高い開放感あふれる空間と、窓を色とりどりに飾る美しいステンドグラス、そしてどこかミュシャの絵のような雰囲気のある壁画で埋めつくされた大広間(Great hall/Voorhal)があります。思わずシャッターを切りたくなってしまうような、そのような素敵な場所だと個人的に思います。通り過ぎるだけではもったいないので、お目当ての画廊へ向かう前にぜひチェックしてみてくださいね。

②有名作品が集結している「名誉の間」

大広間と隣接する大きな教会のように天井が高く、広い部屋です。入口からまっすぐ部屋の突き当たりを見通すと、有名なレンブラントの大きな作品「夜景」が展示されているのが見えます。

この部屋が、アムステルダム国立美術館の中でも一番人気があり、よく知られている絵画が集まっている「名誉の間(Gallery of Honour/ Ere Galerij)」と呼ばれている画廊です。団体客などでいつも混雑していますが、開館直後や閉館前なら少し混雑もやわらぐので、じっくり鑑賞されたい方にとっては狙い目です。

画廊には区画ごとに異なるテーマで絵画作品が展示されています。レンブラントの作品では「夜警」の他にも「自画像」なども展示されているので、お見逃しなく。総じて見どころたっぷりのギャラリーなのです。

各コーナーには、オランダ語や英語での詳しい絵についての解説が載ったラミネートシートが置かれています。作品を鑑賞していて、画家や時代背景、絵の由来に興味がわいたら、解説文をチェックしてみましょう。より深い知識が得られます。

なお、館内はフラッシュを使わなければ写真撮影が自由に行えるので、「夜警」の前で記念撮影をする人をよく見かけます。

画廊の一角に、とりわけ人だかりが……と、よく見れば、そこはフェルメールの作品が集められたコーナーなのでした。「牛乳を注ぐ女」などの有名な絵画の他にも、オランダの田舎町やさりげない風景が描かれた絵もいくつか並んでいます。筆者は実際に見て、想像していたよりもずっと小さい画布に、緻密に丁寧に描かれていることにとても驚きました。実際に訪れてみて初めてできる体験でした。

③17世紀の船舶模型「William Rex」……2階(2.15室)

航海技術や交易の歴史に触れる

古くから、航海や造船、科学などの多分野の技術面で先頭を走ってきたオランダ。その歴史を実際の模型や資料などの展示品を通して詳しく学ぶことができるのも、この美術館の大きな魅力のひとつです。

フェルメールの「夜警」に向かって右側の展示室にに進むと、立派な船舶模型が目を引きます。所蔵作品の中には、このような大きい戦闘用の船の模型もあるのです。この「Model of the William Rex」は17世紀後半のものです。その他にも、武器のモデルや交易で扱われただろう工芸品などの品々、船などオランダらしい画題の絵などが展示されています。

ドールハウス……2階(2.20室)

船舶模型を後にして、部屋番号順に進み、2.20室に着くと、3階建ての大きなドールハウスが展示されています。精巧に作られたミニチュアの装飾品や家具、人形など、子どもも大人も思わず見入ってしまうような出来です。製作された1600年代後半の人々の暮らしぶりを垣間見るような気分になります。

出島の模型……1階(1.17室)

日本とオランダのつながりといえば、江戸時代の鎖国の最中、オランダに許されていた特権的な交易の場所としての長崎の「出島」が思い浮かぶのではないでしょうか。そのミニチュアモデルが、アムステルダム国立美術館にあります。約2世紀にわたって鎖国をしていた日本と海外の唯一の「窓」だった出島。そのミニチュア模型にアムステルダムで出会えるとは、日本人として嬉しいサプライズです。

この展示室の隣の1.18室には、ファン・ゴッホの作品があるので、そちらにもぜひ立ち寄ってくださいね。なお、1階の展示室は左翼と右翼に分かれているので、続けて見て回る際は迷わないようにご注意ください。

 

以上で紹介したものは、この美術館の見どころのほんのわずかな一部分です。

Rijksstudioという美術館公式のウェブサイトを通して、所蔵作品の詳しい解説や写真について調べることができます。もしお目当ての作品があれば、下記サイトで検索してみてください。

https://www.rijksmuseum.nl/nl/rijksstudio

見どころたっぷりのアムステルダム国立美術館。来館した際には、時間の許すかぎり、目いっぱいお楽しみくださいね!

(インフォメーション)

名称:Rijksmuseum

住所:Museumstraat 1, Amsterdam

開館時間:毎日9時~17時

ウェブサイト(英語版):https://www.rijksmuseum.nl/en