運河沿いの館で楽しむ現代写真アート

アムステルダムの中心街にある写真美術館といえば、Keizersgracht 609にある「foam写真ミュージアム」が一番有名ですが、実はその他にも、あまり知られてはいないけれど素晴らしいコレクションを持ち、興味深い特別展を開催しているミュージアムがあります。それが、今回ご紹介する「マルセイユハウスHuis Marseille)」。知る人ぞ知る、真の写真好きのための穴場の写真ミュージアムです。

 

運河沿いの写真ミュージアム

 

アムステルダムの歴史的地区にある多くの美術館と同様に、写真ミュージアム「マルセイユハウス」も、運河沿いに並ぶ建物のひとつに収まっています。住所は、foam写真ミュージアムと同様のKeizersgracht通り沿いの401番で、foamから運河に沿って、町の中心を軸にして20度ほど回るような形で北西の方角に向かって歩けば、10分ほどで到着します。

ミュージアムは、カイザーグラハト(Kaizergracht)の運河沿いにひっそりと建っています。周りの住宅街に溶け込んでいて、入口はとてもさりげなく、ミュージアムの存在に気づかず通り過ぎてしまう人も多いのではないでしょうか。

建物正面には左右ふたつのドアがあります。訪問者の入口は、右にある階段を上がったところの扉です。伝統的な外観のドアですが、自動で開くのでびっくりしました。

入ってすぐ左手にある部屋に、チケットカウンターとミュージアムショップがあります。チケットは、大人が8ユーロ、17歳以下の子どもは無料で、学生割引やシニア割引もあります。また、オランダのミュージアムカード、IamsterdamCityCardなどを提示すれば、入場無料になります。

リュックサックなどの大きい荷物がある人は、スタッフの指示に従って、地下にある1ユーロ(使用返却式)のコインロッカーに荷物を預けてから、展示室を回りましょう。なお、地下にもすでに1つ展示室があるので、ロッカーを使ったらすぐ、鑑賞して回ることができました。

 

2013年に拡張した現代写真のための美術館

 

マルセイユハウスは、もともと1665年に建てられたフランスの裕福な貿易商人のお家でした。その商人が、故郷であるフランス・マルセイユの港を描いた石碑を家の前に飾り、それ以降マルセイユハウスと呼ばれるようになったのだそうです。

1999年になって、アムステルダムで最初の写真のためのミュージアムとして、カイザーグラハトの401番、つまり現在の片方の棟のみにオープンしました。2013年には、隣の399番地の建物も買い入れ、2棟の建物をつないで、合計14の展示室を持つミュージアムになったのだそうです。

 

建物の個性を生かした展示

 

このミュージアムでは、一部屋ごとにテーマのある展示室として、現代写真作品を展示するために使われています。

特に面白いポイントは、建物が持つ個性を生かしたまま、現代写真の展示室として使っているところだと思います。

最初の展示室には、天使や女神が舞う円形の天井画をそのまま残した部屋に、特別なエキシビションとして、ある写真家が撮影した豊満な女性たちの写真作品がずらりと並んでいました。天井画に描かれた人物と、被写体となっている女性の体形に、なんだか共通のものを感じます。

天井が低めな屋根裏部屋には、どこか親密さのある空間を生かして、社会派の人物ポートレイトの連作が展示されていました。

また、ひとつだけ開いた窓から差し込む光が、展示されている写真作品の中の光と同じ方向から射していて、素晴らしい展示となっている部屋も鑑賞できました。

どの展示室も、空間がぜいたくに使われています。合計14部屋の展示室のそれぞれの違いを楽しむのも、このミュージアムの味わい方の一つでしょう。

アート作品としての写真への配慮がすみずみまで行き届いた、素晴らしいミュージアムだと思います。こうした環境でこそ、作品そのものが持つパワーが存分に生かされるのではないでしょうか。

 

前衛的でハイセンスなコレクション

 

マルセイユハウスに展示されている作品は、どれも現代的で、アヴァンギャルドなものばかり。そのわけは、ミュージアムとして誕生した当初から、「写真という芸術ジャンルこそが、この時代を映すもの」だという信条のもと、集められたコレクション作品や、新鋭のフォトグラファーによるテーマの立った特別エキシビションが行われているからなんです。現代の本当の姿を映す鏡として、アートには何ができるのだろうという根源的な問いも潜んでいるようです。

 

野趣漂う庭園と「離れ」

 

アムステルダムの運河沿いの建物には、それぞれの敷地の裏手に庭園が設けられています。このマルセイユハウスにも、例にもれず、建てられた当初の面影を残す裏庭がありました。樹齢100年近いのではと思えるような巨大な木の枝が、庭の半分ほどの面積に、柳のように下がっています。

そして、小さな彫刻、そして「離れ」と呼べるようなガーデンハウスが建っています。小さな家のドアをそっと開けると、室内には、大判の写真作品がぽつんと一つだけ展示されていました。

庭園の奥の離れに1作品だけ飾られている作品には特別感があり、静かな美しい空間でじっくりと鑑賞でき、強く印象に残りました。

「写真というアートの力」を信じるというコンセプトを持った、このミュージアムを象徴するような、独自のセンスにあふれた場所ですので、ぜひ忘れずに訪れてみてください。

 

写真好き垂涎のライブラリー

 

さらに、このミュージアムには、開館時間中は出入り自由の素敵なライブラリーがあります。写真集やアーティストのフォトブックのコレクションが豊富で、写真の歴史やテクニック、写真理論についての書籍も集められています。貴重なフォトブックも多数あり、平日なら特定の本のページのコピーをリクエストすることもできるそうです。

特に探している本が無くても、窓から庭園の緑を眺めながら、ふと手に取った写真集のページをめくってみるのも一興です。無料Wifiもあるので、休憩にも使える贅沢なスペースでした。

独特の美学がいきわたった現代写真ミュージアム「マルセイユハウス」、アート好きな方には絶対におすすめしたいスポットです。ぜひ訪れてみてください。

 

インフォメーション

名称:マルセイユハウス(Huis Marseille)

住所:Keizersgracht 401, 1016 EK Amsterdam

開館時間:火曜から日曜 11:00~18:00

公式ウェブサイト:https://www.huismarseille.nl/en/