ミュージアム・ドルフイス(Museum het Dolhuys)

ハーレム駅から歩いて数分。運河沿いの美しい景観に映える一軒の建物があります。こちらが、オランダ国内でもあまりその存在を知られていない「ミュージアム・ドルフイス(Museum het Dolhuys)」「精神」という目に見えないものをテーマにした、国内でも有数の珍しいテーマの美術館です。昔は精神病の患者をかくまっていた施設で、精神医学についての歴史も学ぶことができるという、ちょっと変わったコンセプトのもと運営されています。展示には、ちょっと怖いホラー的な要素もあえて加えられているミュージアムです。実際に訪問してみて、面白かった点をご紹介していきたいと思います。

 

「精神」がテーマの珍美術館

 

ハーレム駅で電車を降りたら、ハーレムの中心街方面とは逆方向のKennemerplein方面出口に向かいましょう。Frans Halspleinに向かって歩くこと数分で運河に差し掛かるので、橋を渡ってすぐ左手にある道に進めば、ミュージアムが簡単に見つかると思います。

ミュージアムの建物は、中世にまで歴史を遡ることができる古い歴史的建造物です。精神病患者を収容していた建物だけあって、レンガ造りのがっしりとした建物なのですが、開館時間中は門がいつでも開かれているので、館内には気軽に入りやすい印象を受けました。入口のチケットカウンターで入場券を発行してもらいます。大人8.5ユーロ、13歳から18歳までが6ユーロで、それ以下の子どもは無料です。また、オランダのミュージアム・カード所持者も無料で入れます。

 

形がないものを伝える試み

 

館内では、精神医学の歴史、患者の遺品の保存、精神を病んでいてもアーティストとして名を遺した人々の軌跡などを、物や記録映像などを通して伝えるべく、カテゴリー別に展示されています。今改めて眺めると恐ろしいような、精神医学の領域で使われていた治療道具や昔の脳みその模型なども展示されています。

 

最初の常設展示室は、一見すると、がらんとした倉庫のような部屋でした。クローゼットの扉が半開きになっていたので、ゆっくり開いてみると、そこには女性、男性のポートレート写真や古びた雑誌の切り抜き、本や洋服などが現れました。扉を開けた瞬間から、落ち着いた声で誰かが話し始めます……よく耳を澄ましてみると、それらは展示品の所有者だった精神病患者の肉声で、彼らが自身の病気の症状や人生についての語る録音が流れていたのでした。ちょっと不気味ですが、遺品を眺めながら彼らの話を聞いていると、さまざまな複雑な症例がある精神病の不思議、しいては人間の「心」というものの不思議を思い知らされるかのようでした。

このミュージアムのメインテーマは、形がなくて目に見えない「心」。その存在に迫るような問いかけを展示を通して鑑賞者に投げかけてきます。物を通して、形がない人の物語をも伝える試みだと思います。そのために展示はさまざまな形をとって、鑑賞者にアプローチしてきます。常設展の展示室をさらに見てみましょう。

 

精神医学の歴史に触れる

 

他の展示室では、歴代の有名な精神医学の権威の肖像画が並んでいました。暗い書庫の室内中央には、精神病でお医者さんを訪ねるときのような机と向かい合わせの椅子が用意されています。この部屋の展示は、精神医学の歴史に触れるきっかけになりました。また、精神病患者を描いた大判スケッチのコレクションも所蔵・展示されています。なんともいえない複雑で特殊な表情をたたえた患者のポートレートや、もの言いたげな瞳をした女性の肖像スケッチなど、こわいくらい迫力のある作品がさりげなく展示されていたので、ぜひ見逃さずに鑑賞してみてください。ショッキングなほど力強い絵や写真が見られます。

 

体験型展示も豊富

 

廊下に出ると、その壁には「Bell me」と赤い字で書かれていて、その下に年季の入った小さな公衆電話が置かれていました。受話器を手に取って見ると、誰かがぼそぼそと話す声が聞こえてきます……背筋がゾクッとします。オランダ語だったので内容は分かりませんでしたが、スタッフに質問してみたところ、こちらも精神病に罹っていた患者のうちの一人が人生経験を語っている肉声の録音なのだそうです。耳元から聞こえてくるかぼそい声がどこか哀愁を帯びて感じられて、時空を超えて電話を受けているような気分になります。

内容が詳しく分かればもっと興味深いことがわかるはずですが、残念ながらこのミュージアムでは、オランダ語のみでの解説がほとんどで、英語での情報が多くありません。展示品を通して理解できることは多く、絵画やスケッチなど、映像資料などを眺めているだけでも、普段触れることができない世界について学べます。

 

暗くなってからの訪問がおすすめ

 

なお、ホラー要素を楽しみたい方には、木曜日に訪問することをお勧めします。夜間延長開館されているので、鑑賞のための時間をたっぷりとれますし、日が落ちて外が暗くなってからの方が雰囲気が出ると思います。中庭もなぜか真っ赤なライトアップが施されるので、夜はいっそう神秘的なアートスポットに変化するミュージアムです。

 

さらに、コンピューターのプログラムを使って、自分の精神判断ができてしまうシステムがありました。ゲーム感覚で挑戦できる、数字の羅列を使ったプログラムでした。忍耐力を試されるという点では、なかなか手ごわいゲームです。なおかつ、「精神異常」と診断されてしまったらどうしよう……というちょっとしたスリルを感じられる遊びでした。

 

館内でのイベント多数

 

このミュージアム・ドルフイス(Museum het Dolhuys)では、子どもや大人向けのワークショップやレクチャー、コンサートなどのイベントが多数開かれています。ミュージアムのカフェは運河沿いの緑や水鳥たちを眺めながらくつろげるアットホームな空間になっているので、普段使いにもちょうどいいスポットです。今後の特別エキシビションにも注目したい、ちょっとエキセントリックなミュージアムなのでした。

 

インフォメーション

名称:ミュージアム・ドルフイス(Museum het Dolhuys)

住所:Schotersingel 2, 2021 GE Haarlem

開館時間:火曜・水曜・金曜10:00-17:00、木曜10:00-21:00、土曜・日曜12:00-17:00

公式ウェブサイト(英語版):http://www.hetdolhuys.nl/english-information/