森の中の至宝・クレラー・ミュラー美術館(Kröller-Müller Museum)

クレラー・ミュラー美術館は、オランダ・ヘルダーランド州にある大きな国立公園「デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園(the Hoge Veluwe National park)」の中心部分に建つ、自然に囲まれたミュージアムです。見どころは、ファン・ゴッホやジョルジュ・スーラなど、西洋美術史の上で重要な画家たちの名作がコレクションされているところと、野外に設置された彫刻作品の公園です。美術ファンには絶対に見逃せないアートスポットだといえます。

 

ゴッホらの名作が勢ぞろい

 

クレラー・ミュラー美術館の所蔵品は、ヘレン・クレラー・ミュラーさんという美術コレクターが集めた西洋絵画を中心とするコレクションが元となって形成されました。1938年に国立公園の中に開館して以来、世界中から訪れる美術ファン必見のミュージアムとして人気を誇り、年間40万人が訪れています。

コレクションには、ジョルジュ・スーラファン・ゴッホピエト・モンドリアンなど、数えきれないほど多くの有名画家たちの作品が含まれています。アートにあまり興味がない方でも、「あれ、この絵は美術の教科書で見たことがある!」と歓声を上げること請け合いです。そのような日本でも人気のある画家たちの作品をこうして揃って鑑賞することができるというのは、本当に贅沢な体験だと思います。

 

わざわざ行く価値のある美術館

 

美術館のある国立公園には、アムステルダムからは自動車で約1時間半で到着できます。公共交通を使う場合は、まず電車でアペルドールン駅(Apeldoorn station)もしくはエーデ・ワーゲニンゲン駅(Ede-Wageningen station)まで行き、そこから「Barneveld」方面行の108番バスに乗ると、オッテルロー村(Otterlo)へ着きます。そこから美術館まで106番バスで向かいます。電車やバスの時刻については、こちらのサイト(https://9292.nl/)が便利ですので、事前に調べておきましょう。

 

クレラー・ミュラー美術館は、森のような深い緑で周囲を囲まれています。入口の前には広い芝生が広がっていて、ハーレム出身の彫刻家オズワルド・ウェンケバッハの作品が出迎えてくれます。

ちなみに、日本の箱根彫刻の森美術館はこちらのクレラー・ミュラー美術館を参考にして造られたのだとか。確かに、緑の中でアートを鑑賞するなんて、アートファンならずとも魅了されてしまうような素敵なアイディアですよね。

美術館の入口でチケットを買えるほか、オンラインや公園の入場門でもチケットが手に入ります。美術館が公園内にあるので、公園の入場料と美術館の料金を合わせて大人18.60ユーロのコンビチケットが販売されていました。オランダのミュージアムカードを持っている人でも、公園への入場料が別途かかることになっていますが、美術館の入口ではミュージアムカードのみで入場できました。

 

充実した絵画コレクション

 

ヘレン・クレラー・ミュラーさんとその旦那さんが蒐集した近代美術のコレクションは、その総数なんと1万1500ほどあるそうです。「ミュージアム・ハウス」を建てて、アートに囲まれた暮らしをすることを夢見ていたというヘレンさんのアイディアと情熱が、野外の彫刻庭園とクレラー・ミュラー美術館本館のオープンにつながったのだそうです。オランダ国内の有名画家であるフィンセント・ファン・ゴッホやピエト・モンドリアンの主要な作品はもちろん、フランスの画家クロード・モネやジョルジュ・スーラ、パブロ・ピカソの名作などを集めたクレラー・ミュラー家の人々は、当時の重要なアートコレクターだったことが容易に想像できますよね。

クレラー・ミュラー美術館のゴッホのコレクションは素晴らしく、アムステルダムのゴッホ美術館に次ぐゴッホの作品の充実ぶりです。絵画90点、デッサン180点ほどが所蔵されていて、ゴッホのためのギャラリーが美術館の中央部分に設けられています。今でこそ高く評価されていますが、当時はあまり価値を認められていなかったファン・ゴッホの作品をいち早く買い集めるようにアドバイスした美術評論家ブレマーのおかげで、現在のこのようなファン・ゴッホギャラリーを鑑賞できるのだそうです。

ゴッホが絵画界にデビューしたころの作品からその後に至るまで、その壮絶な人生をたどれるような幅広いコレクションなので、見ごたえがあります。初期は黒っぽい、闇の中からわずかな光で浮き出てくるような絵画だったのが、後期になるにつれ、黄色や青色を大胆に使った表現に変わっていく様子がギャラリーを歩きながら理解できます。所蔵品の中でも一番有名なのは、ファン・ゴッホの「夜のカフェテラス」でしょうか。同じくゴッホの「アルルの跳ね橋」もあり、ここで実物を見ることができるとは思っていなかったので、筆者は感激しました。

また、「アルプ:造形の詩」という特別な期間限定の展覧会が開かれており、抽象彫刻を手がけたアーティスト、アルプの作品がずらりと並んでいました。クレラー・ミュラー美術館には豊富な彫刻作品のコレクションもあります。

広大な庭園に点在するアート

 

クレラー・ミュラー美術館は、館内だけではなく、その庭園も大きな魅力の一つです。彫刻の庭園(Sculpture gardenと呼ばれる野外ギャラリーは、25ヘクタールと、ヨーロッパでも1・2を争う広さを誇っています。本館を出てすぐのところに、イサム・ノグチの彫刻が立っていました。池の水面には、よく見るとゆらりゆらりと動く「浮かぶ彫刻」があります。大きなテントの下には、野外カフェ・レストランがありました。他にも、オランダ人建築家のGerrit Thomas Rietveldのパビリオンには、バーバラ・ヘップワースの抽象彫刻作品がたくさん並べられていて、不思議な空間を作り出していました。巨大な迷路のようなものだったり、建物のようなモニュメントもたくさんありました。

 

庭園を歩いていると、まるでアートと自然が醸し出す美しくもミステリアスな空間に迷い込むような体験ができます。お庭を散策すると、気持ちも体もリフレッシュすることができました。

「近代や現代のアートはよくわからない」という声をよく聞きますが、アートを愛してやまないコレクターが集めた作品群を見て回ると、その情熱が伝わってくるような、素敵な場所です。

 

インフォメーション

名称:クレラー・ミュラー美術館(Kröller-Müller Museum)

開館時間:火曜から日曜 10:00~17:00(彫刻の庭は~16:30)

住所:Houtkampweg 6 ,6731 AW Otterlo

公式サイト:https://krollermuller.nl/jp