機械好きな方は必見! クルヴィウス博物館

唐突ですが、実はオランダの国土の26パーセントは、海面以下の高さにあるんです。そのため、昔から水害に見舞われることが多く、堤防などの灌漑設備をしっかりと築いて、治水対策をする必要が常にあったのだそうです。オランダに住む人々は、より安全で快適な暮らしのために、時代を追うにしたがって必要に追われ、灌漑の技術を向上させていきました。

そのようなオランダ人の「水との闘いの歴史」を学べる博物館が、北オランダのクルヴィウス地区(De Cruquius)にあるクルヴィウス博物館(Museum de Cruquius)です。

 

静かな郊外に建つ灌漑史の象徴

 

アムステルダム中央駅から来る場合は、各駅停車のSprinterという電車に乗って、南西方向に位置するホーフトドルプ駅(Hoofddrop)に向かいます。そこから「ハーレム駅(Station Haarlem)行き」の340番バスに乗り、クルヴィウス(Cruquius)の Ringvaartbrugという停留所で降りれば、博物館の目の前に到着します。バスを降りると、都心部とは違ったのどかな農地や林、公園や、郊外型の店舗が並ぶ景色や澄んだ空気にほっとするかもしれません。このハーレマーメールという地域にいくつかある博物館のうちのひとつが、このクルヴィウス博物館(Museum de Cruquius)です。

博物館は写真で見るとおり、個性的な外観をしているので、一目でわかると思います。建物の左側から裏に回り込むと、地階部分に入口があります。早速入場してみましょう!

歴史を物語る蒸気式エンジン

入ってすぐのところにチケットカウンターがあります。入場料金は大人8ユーロ、ミュージアムカードがあれば無料で入場できます。

外から見ると、まるで小さなお城のようなこの建物。建築としてはオランダ国内では珍しいネオ・ゴシック形式のもので、中央の建物から蜘蛛の手足のように伸びている鉄製のものは、水面の高さを調節するためのポンプの一部です。建物の中心部には、灌漑のための巨大な蒸気エンジンが設置されています。ここは、オランダの工業革命とその道のりを実物を通して学べる貴重な場所なんです。

丁寧な説明が嬉しい博物館

チケットを購入すると、係員のおじさんが、入口すぐ右手の部屋に案内され、約15分ほどの可愛らしいアニメーション作品を鑑賞させてもらいました。このクルヴィウス地区は、度重なる大雨で川が広がり、平地に湖がいくつもできあがり……という、想像しただけでも住むことが難しいような立地条件をもっています。その困難にめげず、苦労して技術革新を重ねて、街や農地のための土地、そして道路を築き上げていった地域の人々の努力が、アニメーションを通してよくわかりました。子どもにもおすすめです。

映像が終わると、おじさんが展示の最初の部分を見学する際に付き添ってくれました。少々オランダ語風でしたが英語で詳しく説明してくれたのと、気軽に質問できるのは、とても嬉しいところです。このように、個人の訪問者に丁寧に対応してくれる博物館はオランダでも珍しいのではないでしょうか。

おじさんの説明によると、必要に応じて湖の水面の高さを調節するために、この灌漑用ポンプが稼働していたのだそうです。現在は実用されていませんが、保存・修理のおかげで、巨大ポンプを実際に動かしてみることができます。情熱をこめて語ってくれる姿を見ていると、地域の人たちがこの博物館によせる愛情に触れ、胸が熱くなりました……!

大迫力のエンジンとポンプを見学

オランダ国土は海抜何メートルなのかが一目瞭然で分かる大きな地形のジオラマや、灌漑のための機械や風車の仕掛けがわかるミニチュアモデルなど、見どころはたくさんありましたが、中でも目玉となる展示はエンジンルームと呼ばれる場所です。係員のおじさんが、世界最大級の蒸気式エンジンを実際に動かして見せてくれました。

1849年にイギリスで作られた機械なのですが、当時としてもとても高価な1ピースでできた鉄製の巨大な部品を使うなど、製作に高い技術を必要とするものなのだそうです。ポンプを動かす大きな鉄製の腕のような部品が上下するさまは、本当にダイナミック。機械の出す音が部屋にずしんと響き渡り、ボイラーの匂いが漂ってきて、とにかく圧倒されました! 窓の外からは、1分につき何十トンもの水をコントロールするポンプが上下しているのが見え、迫力のある水音が絶えず聞こえてきます。

解説してくれたおじさんは、「これが私たちの自慢の機械だからね」と、さりげないふりをしながら、この機械の存在をとても誇らしく思っていることが伝わってくる微笑みを浮かべていました。

展示を見終わって出入り口に戻り、カウンターの近くに小さなおみやげコーナーを見ていると、なんと日本語のパンフレットを発見しました。日本人の訪問者も多いため、オランダ語、英語に続いて日本語の詳細な翻訳がなされたのだそうです。エンジンについて技術的なことを詳しく知りたい方には、こちらで販売されている2.5ユーロのパンフレットがおすすめです。

一軒家を改装した可愛らしいカフェ

 

博物館の隣にある、この可愛らしい一軒家は、カフェになっています。昔は、管理を仕切っていた人が住んでいた家で、今もその面影を残したアットホームな雰囲気のインテリアがとても魅力的な場所でした。

現在は技術が発展したとはいえ、海抜が低いというオランダの土地事情は変わりません。水害はいつでも起こりうることなので、オランダ人たちが長年水と闘ってきた歴史を知ることは大事なことなのではないか……しみじみとそう思える、有意義な時間を過ごすことができました。観光スポットとしてはちょっと渋いのですが、クルヴィウス博物館、おすすめです!

(インフォメーション)

名称:クルヴィウス博物館(Museum de Cruquius)

住所:Cruquiusdijk 27

2142 ER Cruquius

開館時間:3月から11月まで平日10時~17時、休日11時~17時

11月から3月まで平日13時~17時、休日11時~17時

公式ウェブサイト:http://www.haarlemmermeermuseum.nl/en/cruquius-museum–world-largest-steam-engine