アルクマールのチーズの歴史に触れる旅

アムステルダムから電車で30分の位置にある街、アルクマール(Alkmaarは、チーズマーケットの会場として栄えたことで名が知れています。今でも街の中心にある広場でチーズマーケットが行われている金曜日に、アルクマールのチーズの歴史に触れるため、半日旅行をしてみました。

 

街中にチーズのある風景

 

アルクマールの街では、なんと1365年からチーズが売り買いされてきた記録が残されています。1622年から現在まで、街中のWaagplein、その名も「秤量」という意味のある名のついた広場で、伝統的なスタイルのチーズマーケットが開かれています。4月から9月の間の毎週金曜日、朝10時から午後1時まで開催されています。せっかくなら、マーケットの様子を見学したいと思い、筆者は朝早めに起きて、アムステルダムからアルクマールまで電車に乗って出かけました。

 

駅から街を抜けてチーズマーケットへ

 

アルクマールの駅を出て周りを見渡すと、「チーズを目印についてきて!」というチーズ型の旗が見えました。駅から旧市街までは徒歩10分ほどの距離がありますが、こちらのチーズを目印にすれば迷うことなくたどり着けます。かわいくて親切なしかけですよね。

駅から歩いて7分ほどして、運河をわたる橋に差し掛かると、なんと運河の向こう岸にチーズを満載した小舟が見えました。船の持ち主は岸辺にいた人と談笑しています。重たそうな、大きくて丸いチーズの塊がたくさん乗った船は、これから市場に向かうのでしょうか。チーズマーケットを見学するのがより楽しみになってきました。

 

見物客でにぎわうマーケットの広場

 

チーズマーケットの会場である広場Waagpleinに到着すると、街の他の箇所にはないような人だかりに圧倒されますが、実際の混雑具合はそこまでひどくなく、ゆっくり歩けば問題ない程度でした。世界中から訪れるありとあらゆる年代の観光客が集まっていて、写真を撮ったり、広場を眺めたりしています。広場には、オランダの伝統衣装であるとんがり帽子と赤・青・白のトリコロールが眼に華やかな服を身に着けた女の子たちと一緒に写真が撮れる記念撮影スポットがありました。

さて、午前10時になると鐘が鳴り、チーズマーケットが始まります。見ると、広場の中心には、すでに大きく丸々としたチーズのボール状の塊が規則正しく並べられていて、特徴的な衣装を身に着けた男性たちが二人組で建物からチーズを続々と運び出しています。この二人組のチーズを運ぶ運搬人たちは、チーズの販売会社によって色違いの帽子をかぶっていて、清潔感のある白いシャツにズボンといういでたちをしています。チーズを運ぶのには船のような独特の形をした道具を使っていて、リズムよくせっせと建物と広場を往復する様子には、軽快な印象すら覚えましたが、実は一度に約120キロもの重さのあるチーズを運んでいるのだそうです。

広場に面した立派な建物は、14世紀に建てられたWaaggebouwです。そこから司会の女性が出てきて、マイクを使ってアルクマールの街のチーズマーケットの歴史や習わしを説明してくれます。チーズの運び方にも独自のテクニックが必要なのだとアナウンスの女性は言います。

チーズの売買について、手順を追って説明がされました。まず、それぞれのチーズは味見され、値段が決まり、重さが量られて売り買いされること。チーズ組合は1593年に設立され、「チーズの父(Cheese Father)」と呼ばれる親分格が、複数のチーズ会社によって成り立っている組合を取り仕切っているということなども語ってくれました。オランダ語、英語、ドイツ語、フランス語の4か国語を操る司会の女性は、各国語を交互に話すので、説明の全体を聞き終わるまでにはかなりの時間がかかります。マーケットの概要については、Waagpleinの広場の前の建物に入っているツーリストインフォメーションのVVV、もしくは2階から上にあるチーズの博物館(Hollands Kaas museumでも詳しく学ぶことができます。

 

名物のチーズ博物館へ

 

チーズ博物館に興味を惹かれて、入場してみました。チケットは大人が5ユーロ、4歳から12歳までの子どもが2ユーロで、ミュージアムカードがあれば無料です。受付をすませると、スタッフのおばあさんが一口サイズの熟成ゴーダチーズを手渡してくれました。そのチーズをぽいっと口に入れて、味わいながら博物館を鑑賞できるなんて、面白いですね。北オランダ産の48か月熟成ゴーダチーズは、小さい一切れでもとても濃厚な味わいでした。

館内では、チーズの原料である牛乳、しいてはオランダ国内の酪農の歴史や成り立ちから、チーズ生産の歴史や手法、道具、チーズにまつわる文化まで、さまざまな角度からチーズについて学べますスタッフの方によると、金曜の午前中だけは混んでいるのだそうで、筆者が午後4時に訪問した際にはかなり空いていました。

まず、ミニシアターに案内され、チーズの歴史を簡単に説明した8分間の映像を見せてもらいました。実際にチーズ工場を見学する機会はめったにないので、ダイナミックなチーズ製造のビデオに見入ってしまいました。オランダという国の主要な産業としてチーズという乳製品が果たしてきた役割の大きさも感じます。

展示ケースには、昔ながらのチーズ製造法に使われる木製や金属製の古びた道具などが並んでいました。伝統的な製法ではどの道具をどういった手順で使ってチーズを生産していたのかが、タッチスクリーンなどを使って、ゲーム感覚で学べる展示もありました。

展示の中でひときわ目を引いたのは、1964年製のエダムチーズです。北オランダのとある工場で最後に作られたゴーダチーズが寄贈されたものだと書かれていましたが、一体どのような味がするのでしょうか……熟成がかなり進んでいそうです。

小さなミュージアムなので、この博物館の鑑賞に必要な時間は30分弱でした。

 

オランダ・チーズ博物館(Hollands Kaasmuseum)

http://www.kaasmuseum.nl/

 

お土産はもちろんチーズ

 

チーズマーケットが終わると、広場のチーズや柵はすっかりきれいに片づけられてしまいます。広場に面したWaaggebouwの小部屋からがやがやというにぎやかな声が聞こえてくるので見てみると、チーズマーケットで活躍していた男性たちが、ビールを片手に楽しそうに会合をしていました。

旅のお土産には、やっぱりチーズがおすすめです。チーズマーケットが開催中には、会場で伝統衣装を着た売り子さんからチーズの詰め合わせの入った袋が買えるほか、街中のいたるところに出ている露店で、チーズやパン、チーズ専用のカッティングボードからオランダ名産のお菓子まで、さまざまなお土産品が購入できます。

露店は13時ごろにチーズマーケットが閉まると同時に店仕舞いをしてしまうので、できればチーズマーケットからの帰りではなく、行きがけに買えば、買い逃すことがないはずです。色違いの小さいチーズの塊が3つで15ユーロほどのものがお土産にちょうどよさそうでした。見た目がかわいらしいので、プレゼントにもおすすめです。お家に帰ってチーズを塊から切り出して、スライスしてパンに載せたり、ワインと食べ合わせたりして、じっくり味わうのが楽しみですね。

オランダならではのチーズの伝統に触れられるアルクマールの街のチーズマーケット、ぜひ見学しに訪れてみてくださいね。