町中の現代アート美術館「デ・ハーレン・ハーレム」

ハーレムの伝統的な町並みからはあまり想像できないような、前衛的な現代アートが展示されているアートミュージアムが街の中心にあります。その名は、デ・ハーレン・ハーレム(De Hallen Haarlem。直訳すると「the halls、「ホール」という意味があるこのミュージアムは、がらんとしたホールのなかに、現代アート作品で息を吹き込むようなコンセプトのアートスポットです。

ちなみに、アムステルダムにも「De Hallen」という名前のフードコートを含むショップやカフェなどの複合施設がありますが、別の施設です。

今回は、意外な立地にある現代アートミュージアム「デ・ハーレン・ハーレム」の中をご紹介します。

 

中央広場に面した「ホール」の美術館

 

入場チケットは、入口すぐのチケットカウンターで購入できます。ハーレムの中心街の南端にある「フランス・ハルス美術館(Flans Hals Museum)」との共通チケットとして販売されていました。大人12.5ユーロ、19歳から24歳までは6ユーロで、18歳以下は無料です。

スタッフの女性は、チケットと一緒に音声ガイドを手渡しながら、使い方を丁寧に説明してくれました。英語での説明が聞けるというので、さっそく装着して最初の展示室に向かいます。

1階のチケットカウンターからみて左手にある展示室は、ひときわ大きな空間が印象的です。窓からは、外のハーレムの広場を行きかう人々の姿が見えます。

音声ガイドのスタートボタンを押すと、このミュージアムのディレクターからのメッセージが再生されました。ディレクターからの挨拶から始まるなんて、他の美術館では見たことがない試みです。歓迎されているような気分になりました。

 

社会問題に取り組む現代アート

 

2017年10月現在開催されている特別エキシビションは、The Global Tableというタイトルで、17世紀に貿易によって黄金時代を迎えたオランダならではの視点が生かされた展覧会です。

展示室を見回すと、広々としたスペースをぜいたくに使った現代アートのインスタレーション作品が3つ展示されていました。

最初に出合った作品は、床の模様のように見えるインスタレーション作品でした。コーヒーの香りが展示室中に漂っていると感じていましたが、実はその香りはこの作品から香ってきたことが、作品のキャプションを読んで初めて理解できました。コーヒー豆と砂糖が床に模様を描き、一見するとタイルのように見えますが、それは粉がきれいに寄せ集められて脆弱なパターンを描いているだけの、ごく一時的な存在です。コロンビアや南アフリカからヨーロッパへの主な輸出品であるコーヒーと砂糖で作られています。

こうして眺めてみると、コロンビアやアフリカといった農業国から、主に世界中の先進国へと圧倒的な量のコーヒーや砂糖が輸出され、日々大量に消費されていることが連想されます。毎日私たちが飲んでいる「コーヒー」という日常生活の一部に、遠い国の農業が関わっていることにあらためて気づかされました。

 

体験型のアートスポット

 

部屋の奥に進むと、真っ白な山がそびえたっていました。高さ4メートルはあるかもしれません。もちろん、展示室内の話です。一体何の材料で作られているのだろうかと不思議に思って、作品のキャプションにひきつけられるように近寄って見ると、こう書かれていました。

オランダの東インド会社によって、カリブ海で塩の生産が始まりました。黄金時代の貿易の要となった塩という製品は、アフリカから連れてこられ、労働させられた奴隷たちの汗と涙の塊でもあったのです……。

よく見ると、塩の山にはいくつかスコップが刺さっていました。

鑑賞者は、塩を自宅に持ち帰ることができます。水に溶かして流すことで、罪も一緒に水に流しましょう」ともキャプションに書かれていました。

作品タイトルは「塩の魂」。この塩の山は、カリブ海の奴隷たちによって大量に生産されていた塩の歴史を象徴するものなのでしょう。日本では、「清浄化する」という意味合いもある塩のイメージがありますよね。それが重なって、自然とこの作品の意図には共感できるような気がしました。

実際に、その場に用意されていた袋を使って、筆者も塩を少しだけ自宅に持ち帰り、指示通り水に溶かして、流してみました。参加型のインスタレーションとして、興味深い一作品でした。

 

伝統的な建物を生かした広い展示室

 

さて、2階の展示室には、ビデオ作品を上映する映像展示室、そしていくつかのホールが設けられていました。

1階から階段を上がってエレベーターの脇を見上げると、古い建物のファサードの一部が残されていて、びっくりしました。伝統的な建築を保存しようという試みが見えます。大胆で、面白いリノベーションの方法ですよね。

さて、2階の展示室で印象的だったのは、バナナの皮だけを伸ばして乾かしたものを板状に加工した作品群でした。真っ黒になったバナナでできた板が何枚も壁沿いに展示されていて、部屋中に古いバナナの匂いが充満していました。一つひとつの板の下には、オーディオ装置がついていて、そのヘッドホンを耳に当ててみると、それぞれ別の人の独白が聞こえてきます。どこか分からない国の言葉で話しているものもありましたが、英語もあったので、よく聞いてみると、それはバナナ生産に関わる農民の人たちの声でした。

バナナはよく採れても、私たちの暮らしはよくならない

たどたどしい英語で聞こえてくるのは、どこか諦めも交じった嘆き声でした。

いくら「フェアトレード」という言葉が普及しても、まだまだ当たり前のように低賃金で働かされ、搾取されている人々がいることにあらためて気づきました。部屋の中央には、乾いて真っ黒になった大量のバナナの皮が展示されています。その量たるもの、個人の生活からは想像できないくらいの量ですが、実際に私たちのような個人が消費する量を町や国単位で集めたら、簡単にこれだけの量になるのだろうなぁと思いました。

 

考えるきっかけをくれる現代アート

 

実際に目にしてみないと、想像できないことってありますよね。そういった点で、現代アートの作品が私たちに体験を通して気づかせてくれることは、たくさんあるのだと改めて思いました。

その他にも、屋根裏部屋にも作品や説明パネルが置かれていました。オランダの貿易の歴史を劇化した作品の台本(英訳付)や、ミュージアムの近くに住んでいる多国籍の移民から集めた世界中の料理のレシピなどが並んでいて、国際化する私たちの「現代の食卓」について、多面的に考えるチャンスになりました。

日本でも、食料自給率について話題になることがしばしばあると思います。オランダでもアートを通して、歴史的な事実、そして現代の社会問題として注目されていることがわかりました。

特別展は、フランス・ハルス美術館と合わせて、時期ごとに展示替えされます。次の展示も楽しみです。機会があったら、ぜひ訪問してみてくださいね。

 

インフォメーション

名称:デ・ハーレン・ハーレム(De Hallen Haarlem)

住所:Grote Markt 16, 2011 RD Haarlem

開館時間:火曜から土曜11:00~17:00、日曜・祝日12:00~17:00

公式ウェブサイト:http://www.dehallen.nl/en/